ピッキング徒然情話~小指の思い出~




 しょっぱなからいきなり動画を引用いたしましたが、まずは見事なギターソロをお聞きください。
 ジャズギタリストMartin Taylorマーティン・テイラー氏の奏するスタンダードナンバーStella By Stalightステラ・バイ・スターライトであります。

 この演奏でMartin Taylorは、フラットピック(板状ピック)を使わず、右手小指以外の指の腹をピックに、ベースライン、コード、メロディをソロでうまく弾き分けていますが、今回特に注目していただきたいのは

ココ
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 一本で雄雄しく屹立し、右手のピッキングフォームを支えている、小指であります

 人によっては『小指を立てて右手のピッキングフォームを支えるのは悪いクセだから、一刻も早くたたき直すべき』などとも言うこのフォームですが、私自身の考えは『トッププロが、長期に亘ってそのフォームで演奏して何の支障もないのであるから、どんな理屈をここうが反対論は一切却下であります。

 このフォームで、支障がでるタイプの人は直せばいいし、問題なければ直すべき要素は何一つありません。

 ピッキングは、一般に右手でギターの弦を弾くのでありますから、どこかで楽器と右腕とを固定しなくてはなりません。

 通常は、右肘周りの上腕部をギターの胴に乗せる、押し付ける事で安定させていますが、やはり補助的に、固定点をもう一箇所作ることで、ピッキングの安定感を得ようとするのが、ごく自然な感覚なのではないかと思います。


模式図
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 小指ピンコ立ちといえば、かなり前に『マイクを持つ手の小指を立てるとアイドル歌手(&ムード歌謡歌手)の典型的動作になる』というモノマネ芸(誰がオリジナルなのか?)から一般化した、カラオケマイクの小指を立てるポージングを誰しも思い浮かべると思いますが(そうか?)、他にも小指を立てるポージングはさまざまな場面で使用されています。

『私はコレで会社を辞めました』と言って小指を立ててみせる、先日逝去なされた市川準監督の名作”禁煙パイポ”のCMとか、Hなグラビアで、自分の小指を口の端にくわえてみせる女性のポージングでも、たいてい小指は立っています(男性がくわえさせている場合は人差し指が多い)。

『私はコレで会社を辞めました』
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 男性が単独で自分の指をくわえている場合は人差し指が多いようです。

 また、マンガ・アニメの表現で、少女&幼女が小指をくわえているポージングが、幼さの記号のように使われている場合もあったように記憶しています(もしかしてエロ・ロリ系なの?)。

 男性が小指を立てるポージングは、愛人の存在を示す以外、”あえて女性的な身振りをする男性”という意味を持つ事が多く、どうも『一本で雄雄しく屹立し』などと上で描いたようなイメージとは遠いようですな

 では、二本ならどうかと思って、小指と薬指を使って手を支えているピッキングフォームの方がいらっしゃらないかと思って探したのですが、残念ながら見つかりませんでした。

『スリーフィンガー』という、非常にポピュラーなピッキングフォームがあるのですから、残りの指二本で手を支えても良さそうだと思うのですが、フォークの人は手を支えるのに指を使わず、上腕部のみを使っている人がほとんどでした。

 仕方がないので、小指・薬指・中指まで使ってフォームを支えているギタリストを探しましたら、ナッシュビル・サウンドの偉大な父Merle Travisマール・トラヴィス氏の、見事な『ツーフィンガー・ピッキング』の動画をyoutubeにて発見いたしましたので、ぜひご覧ください。


 Merle Travisの、異常によく動く親指と人差し指は、やはり他の三本指に支えられた賜物ではないのかと、私はそんなふうに思うのであります。

 ちなみに、彼の右手親指にはまっているのは”サム・ピック”と呼ばれるピックでして、カントリー&ウエスタン、またデルタ・ブルースなどでは良く使われているものです。

サム・ピック
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 こうなると、小指・薬指・中指・人差し指まで使って、右手を支えるピッキングフォームを紹介しないわけにはいきません
 残る指は親指だけになりますが、なにせ親指は他の指とくらべて関節が一個少ない分、太くて強大ですから、何の不自由もありまっせん

 かの偉大なるジャズ・ギタリストの妙技をご覧あれ



 Wes Montgomeryウェス・モンゴメリ氏は、単音のソロ、オクターブ奏法、バッキングのすべてにおいて親指一本しか使いません。
 他の四本指は完全にボディに固定され、手首をカクカク動かすこともヒジを動かすこともなく、他の指を固定することでかえって稼動域が広がった親指をダイナミックに使って、コードも早いパッセージも楽々と弾きこなしている氏のスタイルを見れば、フォームが良いの悪いのなどという論争がいかにクダラナイかがわかろうというものです。

 演奏が成立しているということは、すなわち力学的にも理にかなっているという事の証明に他なりません。

 ピッキングのスピードだけをみれば、Wes Montgomeryのピッキングは特に速いわけではありませんが、ギターというものは、ピッキングなどしなくても音は出るのです。

 Wes Montgomeryのピッキングスタイルを継承しているギタリストは少数ですけれども、氏の演奏はその後のジャズ・ギター全体に決定的な影響をあたえています。


 さて、小指の話から、親指の話へと変ってしまいましたので、最後にまた、小指一本で右手を支えるナッシュビルの超人を紹介して、今日は〆とさせていただきます。


 …つくづくChet Atkinsチェット・アトキンス氏は最高でありますな






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伊東ゆかり/ 小指の思い出/恋のしずく/知らなかったの伊東ゆかり/ 小指の思い出/恋のしずく/知らなかったのおすすめ度 :アナタが神田~♪

この記事へのコメント

マーク
2019年06月22日 02:52
ダイアーストレイツのマークノップラー氏は右手薬指と小指の二本を付けて弾いてますね。
小指で慣れてる自分には違和感ありまくりで真似出来ませんが、カッコいいです!
2019年06月22日 04:15
こんなリンク切れだらけの古いエントリに、コメントありがとうございます。
とりあえずつべのリンクを再生しておきました。
Mark knopflerさんもプチプチとギターを弾く方でしたね
アタシも昔、親指と人差し指で早いリフをキメてみたいと思って練習しましたが、単弦上でうまく動いてくれず断念した思い出があります。
Mark knopflerさんは人差し指と中指を連動させているようですね。
人差し指の非力さをカバーしていたのでしょうか。
トリヴァルな知識を教えてくださって、ありがとうです

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